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Love adventure
第33章 惑わすBEAT①
 男はあぐりを引きずり、リビングを抜け、奥の方のドアを開けると、ようやく彼女を離した。
 そこは薄暗い寝室だった。
 振り返ると、やはりそいつは昼間自分を殴った男ではないか。

「あ……あんた!よくもさっきはやってくれたわね!?」
「騒ぐ方が悪いのさ」

 男は涼しい顔で言う。

「話せば普通解るでしょ?口より先に手が出るってどうなのよ!」
「ハハハ」

 男は低く笑ったが、その笑顔を見て何かひっかかる。

(――誰かに似ている?)

「俺はマネージャーの綾波剛。お前にはほなみの監視をしてもらう」
「アヤトリだかアヤナミだか何だか知らんけど、監視って何よ!?友達なのよ?意味わかんない!」
「ああ、間違えた。監視ではなく、あの女の精神のケアだ」
「どう間違えたらそうなるのよ!」

 怒鳴った時、ゴソッと衣擦れの音がした。振り返ると、ベットに何者かが横になっている。

「ねえ、他に誰かいる?」

 綾波は答えずに、手にブランデーの瓶を持ち、ベットの方を見て薄笑いを浮かべながら口に含んだ。
 あぐりが恐る恐る近づくと、あっと声を上げそうになる。
 横たわっているのは、三広だった。
 俯せになり、裸の背中とカモシカの様なしなやかな脚が毛布から覗いていた。
 安らかに寝息を立てているが、よく見るとシーツはくしゃくしゃに乱れ、脱ぎ捨てた服が周辺に散乱している。




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