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Love adventure
第33章 惑わすBEAT①
「なんだ、目が赤いぞ?口が悪いわりに随分と可愛いじゃないか……」

 綾波の長い指が、あぐりのスカートの中へと侵入し、巧みに撫で廻し始める。

「い、いやっ!止めなさい……止めてよっ!……こ、このあぐり様に触っていいのは……え、選ばれた男だけなのっ!誰があんたみたいな……っ……」

 あぐりは綾波の胸を拳で叩き、脚をばたつかせるが、足首をグッとつかまれて動かせなくなる。

「ふん。お前が選ぶだと……?女王様みたいな事を言うんだな……」
「そっ……そうよっ!女王様に触らないでっ」

 あぐりの目は涙で盛り上がり、唇がわなわなと震えている。

「女王様を調教か……面白いじゃないか」

 綾波がスカートを捲ろうとした時、部屋のドアが開いた。
 次の瞬間、鈍い音がして、綾波は頭を押さえ顔をしかめ、あぐりに跨がったまま、後ろを振り向き苦々しく溜息をついた。

「……お前か……邪魔するなよ」
「遊ぶのもいい加減にしないと洒落になりませんよ」

 涼やかな声が頭上から聞こえる。
 あぐりは乱れた息のまま薄目を開け、綾波の後ろに立つ人物を見上げた。
 そこに居たのは、クレッシェンドのベースの野村大だった。

 ライブの打ち上げの時、一言も言葉を交わさずに終わった男だ。
 端正な口元から静かに言葉が発せられた。

「綾波さん、どいて下さい」

 野村は綾波を強引に引き剥がし、庇う様にあぐりの前に立つ。
 その手にはバットが握られていた。

「おいおい。そんなんで殴ったらそれこそ洒落にならないぜ?」
「これを使うかどうかは、綾波さん次第ですよ」

 男たちは暫し睨み合っていたが、綾波は深い溜め息を吐き、頭を掻いた。

「……気が削がれたな。そうか、もう交代の時間だな……後はお前に任せる」

 綾波は肩を竦めるとベルトを嵌め、あぐりを見てニヤリと笑うと出て行った。




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