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Love adventure
第37章 惑わすBEAT⑤

稲川は無邪気に笑った。
その笑顔に、ズキンとあぐりの胸が痛む。
「……今日のライブはもう終わりだけど……またここに来ますから!皆、待っててね!」
大きな拍手が起こる中、あぐりは手を叩きながらいつの間にか涙を流していた。
すると稲川が声色を変えて言った。
「……泣くなよ。俺まで泣きたくなるから」
「――!」
彼はまたあぐりの方を向いている。
(――何故?私はただのファンで、この場限りでお別れなのに、そんな風に思わせぶりに見つめるの?
こんなの絶対に有り得ないってわかっていても勘違いしちゃうよ――)
嗚咽が込み上げ、これ以上ステージを見ていられず、ギュウギュウの人を掻き分け出口まで向かった。
まだBEATSのメンバーも稲川も、客席に向かって何か話していた。
大好きな声を背中で聞き、唇を噛み締め、外に出る。
ライブハウスの中は熱気でムッとしていたが、外は涼しかった。
自販機に凭れ、夜空を見上げると、雲の間から僅かに星が煌めいて見えた。
手の中のピックを見つめるが、まるで現実感がない。
(稲川さんがこれを握り締めて、熱い曲を奏でたんだ――)
やがて客達がわらわらと外に出て来た。
皆ライブの余韻のせいか一様に明るい表情だった。
あぐりは、それを他人事の様に眺める。
彼に本気で恋してしまった。
なのに、会えるのはライブの時だけで近付く事も出来ない。
(他の女の子達みたいに無邪気に楽しめなくなっちゃった……)
ひとり溜息を吐いて佇んで居ると、知らない女の子三人が目の前にやってきた。
その笑顔に、ズキンとあぐりの胸が痛む。
「……今日のライブはもう終わりだけど……またここに来ますから!皆、待っててね!」
大きな拍手が起こる中、あぐりは手を叩きながらいつの間にか涙を流していた。
すると稲川が声色を変えて言った。
「……泣くなよ。俺まで泣きたくなるから」
「――!」
彼はまたあぐりの方を向いている。
(――何故?私はただのファンで、この場限りでお別れなのに、そんな風に思わせぶりに見つめるの?
こんなの絶対に有り得ないってわかっていても勘違いしちゃうよ――)
嗚咽が込み上げ、これ以上ステージを見ていられず、ギュウギュウの人を掻き分け出口まで向かった。
まだBEATSのメンバーも稲川も、客席に向かって何か話していた。
大好きな声を背中で聞き、唇を噛み締め、外に出る。
ライブハウスの中は熱気でムッとしていたが、外は涼しかった。
自販機に凭れ、夜空を見上げると、雲の間から僅かに星が煌めいて見えた。
手の中のピックを見つめるが、まるで現実感がない。
(稲川さんがこれを握り締めて、熱い曲を奏でたんだ――)
やがて客達がわらわらと外に出て来た。
皆ライブの余韻のせいか一様に明るい表情だった。
あぐりは、それを他人事の様に眺める。
彼に本気で恋してしまった。
なのに、会えるのはライブの時だけで近付く事も出来ない。
(他の女の子達みたいに無邪気に楽しめなくなっちゃった……)
ひとり溜息を吐いて佇んで居ると、知らない女の子三人が目の前にやってきた。

