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Love adventure
第37章 惑わすBEAT⑤
 小肥りの女の子と、吊り目の細身のレザージャケットの子に、化粧の濃い金髪の三人組だった。
 小肥りが険のある声で「ちょっとあんた。何様なのさ」と、いきなり肩を小突いてきた。
 あぐりは不意打ちによろめき、尻餅をついてしまう。
 稲川のピックを落としてしまい、拾おうとすると吊り目に取り上げられた。

「いきなり何よ!返してっ」

 あぐりは果敢に向かって行くが、吊り目が厚化粧にポイとピックを投げて渡す。
 厚化粧は底意地悪い笑みを浮かべた。

「あんたには勿体ないわよ。私達が大事にしてあげるから安心しなさい」
「アハハハ」

 三人共馬鹿にしたような笑い声を立てた。

「稲川さんが私に投げてくれたのよ!私のよ!返して!」
「勘違いじゃなーーい?稲川様が、あんたみたいなブス相手にする訳ないでしょ??」
「痛い勘違いブスーー」
「キャハハハハ」

 あぐりの胸に殺意に似た物が込み上げる。
 気が付けば、小肥りの顔面をビンタしていた。

 ドカッ!

 吊り目には膝蹴りをかます。

 ガッ!

 厚化粧の顔面には爪を立てて思い切り引っ掻いてやった。

「やっ……やったわねえこのアマ!」

 小肥りに羽交い締めにされ身動き出来なくされて、吊り目と厚化粧に交互にバッグで滅茶苦茶に殴られた。
 口の中が切れて血の味がする。
 だが、負けん気の強いあぐりは三人を睨み付けた。
 三人は一瞬怯んだが、軽薄な笑みを浮かべるとあぐりの胸を靴で蹴りあげ、あぐりは呻いた。

「ぐっ……」
「二度と生意気な面出来ないようにぶちのめしてやるよ!」

 小肥りがヒステリックに叫んだ。

 廻りの客は遠目にこの騒ぎを見ていたが、ライブハウスのスタッフが血相を変えて走って来て、三人は顔を見合わせ、物凄い早さで走って逃げて行った。




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