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Love adventure
第37章 惑わすBEAT⑤
「ぐえっ……ちょっと、苦しい……よ」
稲川は、目を白黒させて呻くが、あぐりは更に強い力でしがみついて、胸の中の思いを彼にぶつけた。
「――帰りたくない!」
「……」
稲川が深呼吸するのが聞こえた。
彼は、あぐりをおぶさったまま、駅とは反対方向へ歩き出す。
彼はずっと無言だった。
あぐりは、馬鹿な事を口走ったのを後悔し、何も言えないでいた。
(私……何を勘違いしてたんだろう……
稲川さんが、ひょっとしたら私を……少しでも好きなのかなって……思ってしまった。
……でも、言わずにはいられなかったよ……だって……もう二度と会え……ない)
十分ほど歩いただろうか。
背中に乗ったまま眠りかけていたらしく、稲川の声でハッと意識が戻った。
「……そんな言葉、簡単に言うものじゃないよ?」
「……え?」
辺りを見回すとそこは、きらびやかな照明でライトアップされたカラフルなお城のような建物が犇めき合う一角だった。
稲川は、その中の一番派手な装飾の建物にあぐりをおぶさったまま入っていく。
入口には部屋番号と部屋の写真がパネルになり掲示されていた。
「――ここでいいか」
『空室』となっている750号室のボタンを大きな指が押すと、チャリンと音を立ててハート型の鍵が出てきた。
それを握り、無言で稲川はエレベーターに乗り込む。
「あ、あの」
「帰りたくないって言ったのは君だよ」
稲川は、目を白黒させて呻くが、あぐりは更に強い力でしがみついて、胸の中の思いを彼にぶつけた。
「――帰りたくない!」
「……」
稲川が深呼吸するのが聞こえた。
彼は、あぐりをおぶさったまま、駅とは反対方向へ歩き出す。
彼はずっと無言だった。
あぐりは、馬鹿な事を口走ったのを後悔し、何も言えないでいた。
(私……何を勘違いしてたんだろう……
稲川さんが、ひょっとしたら私を……少しでも好きなのかなって……思ってしまった。
……でも、言わずにはいられなかったよ……だって……もう二度と会え……ない)
十分ほど歩いただろうか。
背中に乗ったまま眠りかけていたらしく、稲川の声でハッと意識が戻った。
「……そんな言葉、簡単に言うものじゃないよ?」
「……え?」
辺りを見回すとそこは、きらびやかな照明でライトアップされたカラフルなお城のような建物が犇めき合う一角だった。
稲川は、その中の一番派手な装飾の建物にあぐりをおぶさったまま入っていく。
入口には部屋番号と部屋の写真がパネルになり掲示されていた。
「――ここでいいか」
『空室』となっている750号室のボタンを大きな指が押すと、チャリンと音を立ててハート型の鍵が出てきた。
それを握り、無言で稲川はエレベーターに乗り込む。
「あ、あの」
「帰りたくないって言ったのは君だよ」