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Love adventure
第39章 星の瞬きよりも ②

楽屋のドアが開き、場の緊張が途切れた。
スタッフが稲川を呼びに来たのだ。
「開演五分前です」
「はい、行きます」
稲川は、ドリンクを手に立ち上がると西本の肩を軽く叩いた。
「クレッシェの復活、楽しみにしてるよ」
西本は鋭い眼差しで稲川を睨んだ。
出て行きかけた稲川はふと振り返る。
「――俺、馬鹿な犬を飼いたかったんだ。結婚したら飼おうとしたけど奥さんが嫌いでさ……犬小屋……作りたかったな」
これはデジャブだろうかーーこんな話を誰かに聞かされたような……とほなみが記憶を辿ろうとした時、稲川が瞼を閉じ、言った。
「一緒に朝ご飯を食べる事も夢だったな……」
ーーフツーの旦那さまとフツーの結婚をして、フツーの家に住んで毎朝一緒に朝御飯を食べるのよーー
不意に、高校生の頃のあぐりの声が脳裏によみがえり、ほなみの中にあった霞がかった謎が晴れた。
「……ずっと昔……友達も……そんな事を……言って……」
稲川は一瞬瞳を歪ませて、言葉の代わりに手を挙げてステージに向かった。
ほなみは、自分の中に出た謎の答えに衝撃を受けていた。
『結婚する前から、他にお付き合いしている人が居るの』
あの、あぐりのカミングアウトは…
まさか――

