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Love adventure
第48章  毒が廻って……
 まだ空中に漂う羽を虚ろに眺めながら、智也は五年前の出来事を思い出す。

 五年前――
 ほなみは、智也の父が経営する岸コーポレーションに入社し、総務課で働いていた。
 智也はその頃営業課に居ながら、父に経営の事を教わったりしていた。
 同じ社内で働いているとはいえ、ほなみと智也は昼間は滅多に顔を合わせる事は無く、遅くに帰宅した日は、家でも会わないという事もあった。
 そんな日は、ほなみの部屋の前を通る時、ノックしようと思うものの、結局断念して自分の部屋へ戻ったものだった。
 恋人なのだから、夜中でもなんでも彼女の部屋を訪ねてもいいじゃないか――とも思ったが、夜遅く、疲れた自分が彼女とふたりきりにでもなったら、滅茶苦茶に抱いてしまいそうで――
 その事で、怖がられたり嫌われたりするのを恐れていたのだ。

 今となっては、自分のその行動全てが裏目に出てしまったわけだが……

 ほなみを気に入って付き合いたがる男共は何人か居て、智也の目の届かない処でほなみを誘ったりしているのを知っていた。
 その全てを把握出来るわけが無く、智也は社内の信頼の置ける人物――
 用務員であり、父と自分の腹心の部下の中野に、ほなみの交遊関係を探らせていた。

 ほなみ自身は全く自覚が無かったが、酒の席で口説かれたり、誘われたりも良くあるようだった。
 ほなみが悪気無く、智也に溢す事もあった。

「第二業務課の村田君ね……凄く面白いの……
 この間、ボタンを付けて欲しいって頼まれたんだけどね?ワイシャツのボタンが全部外れてるのよ?あり得ないよねえ……ふふ……
 智也、村田君と話した事ある?」
「村田――?」

 智也の頭の中で、社員の名前と顔が駆け巡る。
 社員の名前と顔を覚えておけ、と父にかねてから言われていて、智也はそれを実行していた。
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