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第49章 　危険なknight

｢……脅かして悪かったな｣

綾波は猛る身体と気持ちを無理やり押さえ込み、身体の上からどいてほなみをそっと起こした。

｢……脅かし……ですかこれが！？｣

　泣きながら怒る表情が、さらに綾波の心を鷲掴みにする。

｢だから言ったろう。智也から逃げる練習だと｣
｢酷い！｣

　飛んで来た平手打ちを受け止め、綾波は苦く笑った。
　ほなみは乱れた服を直し、コートをつかむと玄関までドスドス歩いて行く。
　無言でブーツを履く後ろ姿を見ながら、綾波は思った。

（今度こそ、本当に嫌われたな）

｢綾波さん！｣

　ほなみは声を張り上げて振り返る。

｢……何だ｣

　罵倒されるのを覚悟したが、ほなみの口から出た言葉は思いもかけない物だった。

｢どうか無理しないで下さい……綾波さんが居ないと皆が困ります………
　ま……また来ます。今度はあぐりとか、西君と一緒に……｣

　目が合うと、再び頬をさっと鮮やかに染め、ほなみは逃げる様に出て行った。