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第67章 Marry　Me②

｢西本の所はどう？今色々と大変だろ？｣
｢ああ……うん。どうかな……｣

　曖昧に笑うあぐりを訝しげに稲川が見つめながら、柔らかい巻き毛を指でくるくる弄ぶ。
　彼にこんな風に見詰められると、隠し事が出来ない。
　ひとりで抱え込み、誰にも言わないで居る事でも、この人には隠せない。
　決して言葉で｢話してごらん｣と云われるわけではない。
　けれど、歳上の男性らしかぬどこか無邪気な眼差しを前にすると、氷が溶ける様にあぐりは心をさらけ出してしまう。

｢……収録の後帰ってないから……知らない｣

　稲川は目を丸くした。

｢――何だよ、家出？｣
｢家出って……家じゃないし……ふふ｣
｢まあ、そうだよな……あいつと喧嘩でもした？｣
｢あいつって？｣