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Love adventure
第67章 Marry Me②

野村の事なのは解っているが、意地悪をしてみたくなり、わざとすっとぼけた。
稲川は珍しく口ごもる。
「――いや……その……」
その困った様子に愛しさが込み上げた。
(表では虚勢を張る癖に、ふたりきりの時は別人のような稲川さん……
この間、野村君に啖呵を切っていた癖に――)
「残念ながら、仲良しよ。喧嘩なんてしてない」
「――そりゃ本当に残念だ」
稲川はむくれて機材の上にあった水を口に含んだ。
「そう思う?」
「当たり前だろ」
稲川は、そっぽを向いてふてくされた。
あぐりは、バッグを持つ指に力を込め、深呼吸する。
「――だったら……拐っていってよ」
稲川が振り返る。
彼女の瞳には何かの決意が宿っていて、稲川もそれを真剣に受け止める。

