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Love adventure
第67章 Marry Me②

ふたりだけの、シンとしたライブハウスの中で、お互いの呼吸だけが響く。
瞬きさえも躊躇われる程の静けさの中で、あぐりが何を次に言うのか稲川は待っていた。
やがて、紅く小さな唇が動いた。
「――私、家へ帰ったの」
「……うん」
「夫と別れてきました」
迷い無くキッパリと言うあぐりの表情は気高く、こんな場合にもかかわらず稲川は見惚れた。
あぐりは稲川を真っ直ぐに見つめ、静かに話す。
「上手くやっていければそれでいいって思ってたの。
毎日が面白くなくて退屈でも、時々貴方に会えて恋人気分を楽しめればいいかって。
でも……私、そういうの面倒臭くなったの」
「――」
稲川は息を呑んだ。

