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第71章 対決前夜～智也

｢東野さん、まだやってたの？｣

　智也が少し驚いた様に言った。

｢と、智也――さん！？｣

　カナはギョッとしてバランスを崩し、椅子から派手にひっくり返った。

｢きゃ――！｣
　
　お尻を思いきりぶってしまい、痛みに顔をしかめていると、智也が来てカナの腕を引っ張り身体を起こす。

｢大丈夫かい？｣
｢は、はい……ありがとうございます｣

　智也は訝しげにカナを見た。

｢椅子で何して遊んでたんだ？｣
｢う……すいません……つい｣
｢怪我したらどうするんだ……じっとして｣

　智也の指が髪に触れて、思わずカナは歯を食い縛った。

｢――取れたよ？……なんか、怒ってるのか？｣

　髪に絡まっていたシュレッダーの紙くずを取った智也は、しかめ面をしたカナを見て首を傾げた。

｢――ああっ！違います違います！緊張してっ｣
｢そう？｣

　クールな智也の顔が一瞬柔らかく微笑んだ。