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Love adventure
第10章 光と影と痛み
「ほなみちゃん、大丈夫かい?」
 
 不意に頭上で低く優しい声で呼ばれ、弾かれたように顔を上げる。 
 そこに居たのは智也の父だった。仕事の途中で駆け付けたのだろう。いつものパリッとしたスーツ姿だ。後ろには智也が立っている。

「おじさん……」
「大丈夫だよ。きっと助かるから」

 智也の父は、ほなみの頭をそっと撫でた。
 ほなみは、頷くだけで精一杯だった。
 緊張が解れると同時に涙がこぼれ落ちる。
 すると手術室の扉が開き、医師が出て来た。

「娘さんですね?」

 医師は大きなマスクを付け、目だけを覗かせ、静かに訊ねた。
 ほなみの身体が嫌な予感で強張る。

「ご両親ですが、全身を強く打っていまして、あらゆる手を尽くしましたが……残念です」
「……」

 視界がぐにゃり、と歪み、倒れそうになるが、力強い腕がほなみを支えた。
 智也だった。

「最後のお別れをお願いいたします。」

 医師は静かにお辞儀をし、手術室の扉を開け、中へ入る様に促した。

「……しっかり……ご両親に、会ってあげなさい」

 智也の父が言ったが、ほなみは自分の力で足を踏み出す事がどうしても出来なかった。

「……お父さん……お母さん……やだ……嫌っ」
「仁科」

 智也は、ほなみの肩を強く抱き締めた。

「……大丈夫だ。俺が居る。俺や父さんや母さんがこれから、ほなみとずっと一緒に居るから大丈夫だ」
「智也く……ん?」

 その言葉の意味がわからないまま呆然としていたが、智也と、彼の父に手を引かれ、何とか手術室に入り、点滴で繋がれた両親と対面した。


「……!」


 ほなみは両親の変わり果てた姿に絶句した。
 顔にはぐるぐると包帯を巻かれ、目の部分だけがかろうじて覗いていた。
 白い包帯はところどころが赤い色で染みている。
 身体じゅうありとあらゆる場所を管で繋がれた両親は、いつもの姿と違いすぎた。
 ほなみは現実を受け止めきれず、その場で気を失った。両親の最期を見届けることもなくーー


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