この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Love adventure
第10章 光と影と痛み
「ほなみちゃん、大丈夫かい?」
不意に頭上で低く優しい声で呼ばれ、弾かれたように顔を上げる。
そこに居たのは智也の父だった。仕事の途中で駆け付けたのだろう。いつものパリッとしたスーツ姿だ。後ろには智也が立っている。
「おじさん……」
「大丈夫だよ。きっと助かるから」
智也の父は、ほなみの頭をそっと撫でた。
ほなみは、頷くだけで精一杯だった。
緊張が解れると同時に涙がこぼれ落ちる。
すると手術室の扉が開き、医師が出て来た。
「娘さんですね?」
医師は大きなマスクを付け、目だけを覗かせ、静かに訊ねた。
ほなみの身体が嫌な予感で強張る。
「ご両親ですが、全身を強く打っていまして、あらゆる手を尽くしましたが……残念です」
「……」
視界がぐにゃり、と歪み、倒れそうになるが、力強い腕がほなみを支えた。
智也だった。
「最後のお別れをお願いいたします。」
医師は静かにお辞儀をし、手術室の扉を開け、中へ入る様に促した。
「……しっかり……ご両親に、会ってあげなさい」
智也の父が言ったが、ほなみは自分の力で足を踏み出す事がどうしても出来なかった。
「……お父さん……お母さん……やだ……嫌っ」
「仁科」
智也は、ほなみの肩を強く抱き締めた。
「……大丈夫だ。俺が居る。俺や父さんや母さんがこれから、ほなみとずっと一緒に居るから大丈夫だ」
「智也く……ん?」
その言葉の意味がわからないまま呆然としていたが、智也と、彼の父に手を引かれ、何とか手術室に入り、点滴で繋がれた両親と対面した。
「……!」
ほなみは両親の変わり果てた姿に絶句した。
顔にはぐるぐると包帯を巻かれ、目の部分だけがかろうじて覗いていた。
白い包帯はところどころが赤い色で染みている。
身体じゅうありとあらゆる場所を管で繋がれた両親は、いつもの姿と違いすぎた。
ほなみは現実を受け止めきれず、その場で気を失った。両親の最期を見届けることもなくーー
不意に頭上で低く優しい声で呼ばれ、弾かれたように顔を上げる。
そこに居たのは智也の父だった。仕事の途中で駆け付けたのだろう。いつものパリッとしたスーツ姿だ。後ろには智也が立っている。
「おじさん……」
「大丈夫だよ。きっと助かるから」
智也の父は、ほなみの頭をそっと撫でた。
ほなみは、頷くだけで精一杯だった。
緊張が解れると同時に涙がこぼれ落ちる。
すると手術室の扉が開き、医師が出て来た。
「娘さんですね?」
医師は大きなマスクを付け、目だけを覗かせ、静かに訊ねた。
ほなみの身体が嫌な予感で強張る。
「ご両親ですが、全身を強く打っていまして、あらゆる手を尽くしましたが……残念です」
「……」
視界がぐにゃり、と歪み、倒れそうになるが、力強い腕がほなみを支えた。
智也だった。
「最後のお別れをお願いいたします。」
医師は静かにお辞儀をし、手術室の扉を開け、中へ入る様に促した。
「……しっかり……ご両親に、会ってあげなさい」
智也の父が言ったが、ほなみは自分の力で足を踏み出す事がどうしても出来なかった。
「……お父さん……お母さん……やだ……嫌っ」
「仁科」
智也は、ほなみの肩を強く抱き締めた。
「……大丈夫だ。俺が居る。俺や父さんや母さんがこれから、ほなみとずっと一緒に居るから大丈夫だ」
「智也く……ん?」
その言葉の意味がわからないまま呆然としていたが、智也と、彼の父に手を引かれ、何とか手術室に入り、点滴で繋がれた両親と対面した。
「……!」
ほなみは両親の変わり果てた姿に絶句した。
顔にはぐるぐると包帯を巻かれ、目の部分だけがかろうじて覗いていた。
白い包帯はところどころが赤い色で染みている。
身体じゅうありとあらゆる場所を管で繋がれた両親は、いつもの姿と違いすぎた。
ほなみは現実を受け止めきれず、その場で気を失った。両親の最期を見届けることもなくーー