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第79章 新しい息吹

｢記憶にないでしょう……貴方は中庭で遊んでいてひょっこり会社の中へ迷い込んだのですねきっと……
　私は、まずいところを見られたと思い、発作的に小さな貴方の首に手をかけました……｣
｢――！｣

　中野はシワのある目元を歪ませ、智也の視線から顔をそらして声を詰まらせる。

｢……私は貴方の顔を見ずに、その手に力を込めようとしました……
　すると貴方は小さな手で抱き締めてきたんです……
『どうしたの？どうして泣いているの？』……と……可愛らしい声で……
　真っ直ぐに見詰めている貴方にそれ以上何もできませんでした……っ｣
｢……｣
｢そこへ社長がやってきて、もうおしまいだ、死ぬしかないと思いました……
　すると、貴方はこう言ったんです。
『パパ。おじさんが寂しそうだから、一緒に遊んでてもいい？』

　社長は、私を一瞬訝しげに見ましたが、貴方の無邪気な言葉で、私に一切追求をしてきませんでした……｣
｢――そんな事が……｣