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おれは手芸部
第1章 おれは手芸部
 ざわざわ。
 キンコンカンコン。
 全校生徒帰校のチャイム。
 ざわざわ。
 日本人たちの声。
 校舎から、グラウンドから。

「やっちまった!あーあ、ヒョンの立場がなくなるわ。ヒョンが明日しばかれたらどーしよう。ヒョン気ぃ弱いからなぁ、しまったなぁ」
「・・・ミアネ」

 謝ると、その丸い顔にふたたび、三日月がふたつ浮かんだ。

「クリゴ」

 ソンギの顔に。

「コマウォ」

 あの薄汚れた古臭いハッキョみたいな。
 狭苦しいけどあったかかった。
 あったかい笑顔の、ソンギに。

「・・・俺が言いたかっただけやから。べつに気にせんでええよ。さ、続きはまた明日やな。俺マジでな、ぬいもん上手になってな、夏のコミケまでには脚カンペキに治して、進撃の巨人のコスプレしたいねん。ウテソンベと話して本気になってん、俺。マジ本気で巨人コスするわ!だからまた明日も頑張ろや。一緒に頑張ろうや。せっかく日本の高校に入ってんから、日本人とも仲良くなってさぁ、高校生活楽しもうや。キョンアに聞いたで?クラスでトンム出来たんやろ?だから泣くなって。ウテソンベのことくらいで、泣くなって。世界は広いねんって。俺らがおった場所があんまりに狭すぎただけやねんって。ウテソンベよりええ男いくらでもおるって。な?」




 泣いてんのは、ウテオッパのことなんかじゃないわ。




「え?いまなんか言った?」

 オレンジ色の家庭科室。
 きょとんと目をぱちくりさせながら立ち上がる松葉杖。
 下段にブチ込むフェルト、ケースを重ねて、裁縫箱のフタを閉める。

「帰ろうや。あーあ、今日またチェサやねんで!週2でチェサとかまじ死ねるよな!」
「マジで?5月に集中して死にすぎやろ」
「やろ?ないよなーまた明日も弁当臭なるわ」
「いや、それは関係なくいつもキムチぶっ込まれてるやん」
「・・・それもそうやな!」



 ははははは。

 

 この学校におる日本人。
 笑い声も同じ。
 顔とか、背丈とか、言葉使いも、多少違うくらい?
 ざわざわ。
 日本語の中で。
 ざわざわ。
 ナたちの、日本語とウリマルが混ざった言葉って。
 ざわざわ。
 彼らの言葉とは、ちょっと違うくらい?
 ざわざわ。
 でも。
 ざわざわ。
 ソンギの言葉だけは、日本語とも、ウリマルとも、ちがう。
 なんでやろなぁ。






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