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愛姫のあぶない投資性活
第8章 魔性の女に貢ぐ男たち Ⅱ
1時間半は待っただろうか。ようやく、私たちのチケット番号がアナウンスされた。空いた部屋から案内されるので、部屋は選べない。

写真パネルが明るく点灯している部屋は、標準的な広さと料金の部屋だった。もちろん土日は平日より割高だ。

エレベーターの中でやっと、普通の声量で会話ができるようになって、

「狭いソファーで待ちくたびれちゃったね。」

「そうですね。でも意外に早く空いた。」

「もう11時ですもん。休憩のカップルは帰り出す時間よね…。私たちはもうお泊りだね。」

「僕が優柔不断だからです。ごめんなさい。」

「謝らないでぇ。私も春日君の気持ち…考えないでごめんね。」

私は春日君の腕にギュッと抱きついて、頬を寄せた。春日君の身体はかなり汗をかいたのか、シャツが湿っていた。

エレベーターが私たちの入る部屋の階に止まり、ドアが開いた。薄暗い、廊下から二人くらいの人影が現れ、腰を低くして下を向いたまま、

『ご利用ありがとうございます。』

と、一人がすれ違いざまに言って、スタッフルームに消えて行った。かなり忙しそうだった。ラブホの廊下でスタッフに出会い、挨拶されたのは初めてだった。

「ここですね。611号室。」

春日君が部屋番号をチケットで確認して、玄関扉を押し開けた。センサーライトが点灯し、チヤイムが鳴って、自動清算機がアナウンスをする。

『ご利用ありがとうございます。お部屋のドアは自動的にロックされます。外出される際はフロントまでご連絡ください。尚、災害時はロックが解除されます。』

私には聞き慣れたアナウンスだったが、春日君は靴を脱いだ後、立ち止まって、聞き入っていた。

「こんなところで大地震なんかに遭って、怪我したりしたら、恥ずかしいですね。」

「ありえない話じやないわよね。服を脱いだら、きちんと畳んでおくとか、停電した時は真っ暗だから、心構えは必要かもね。スタッフの避難誘導なんかも期待できないし…。」

私たちは、もうお泊りを決めていたから、時間に余裕が出来て、のんびり、内扉を開けて部屋に入った。
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