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Black velvet
第6章 革と 金具、そして足枷の先には。
うたた寝をするカズは
ストールを巻かせたせいで
対向車には 女性に見えるかもしれない。


信号待ち、助手席側の隣につけた
大型バイクのメットが

カズを覗いているような向きに感じて
思わず その膝に手を置いた。


「ん?」 どこかへ着いたのかと
まだ眠たげなまぶたを
ゆっくりと開いて、俺を見る目が
あまりに無防備で

誘われるように 頬に触れた。


「まだ 寝ていていい」


「うん」


車を走らせ、家の近くまで来ると
自然とカズが 目を覚まして
シャッターね、と リモコンを取る。

半同棲しているような錯覚に陥り
そうなると 今度は夜の仕事が
気にかかってくる…


恋は欲を連れてくる、と
錆び付いた感覚を思い出し
胸の内で苦笑し ドアを開けた。




ガレージには あまり走らせていない
今乗っていたのよりは小型の車が
もう一台、ある。


「運転は?」と尋ねると
「免許は持ってるけど
しばらくしていない」らしい。


次に来たら、 お前の運転で
ドライブでもしようかと誘うと
「命知らずだね」悪戯に笑って

カズは ベルのところへ。


「ただいま、ふふ。
いいこだね」


その姿に 抱く妄想は
言葉にすらできない。
家族のようだ…などとは 決して。













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