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Black velvet
第9章 ときには、飾りの鎖だけでなく。
*t


「これを機に どこか事務所と
契約しても いいかもしれないな」



デビューの頃のまま
マネジメントを 俺がしているが

カズの実力を もっと活かすには

実績と実力のある 芸能事務所に、託す方が
良いかもしれない。と 分かってはいた







俺のもとに所属する ただ一人の俳優、、
公私共に この手の中に恋人が居る実感が
得られていたから

これまで提案出来ずにいたことを
今夜、 告げてみる。





「… そう、なの、、うん、ごめんね
いままで甘えてて」


何故か寂しそうに、 カズは グラスの脚を弄りつつ
視線を逸らして 答えた





「いや、お前の成長の為には…と。
このままカズの仕事を把握していられるほうが
個人的には 安心だが、」


ほろ酔いで 艶やかな彼に
心細さを匂わされると、すぐに抱き寄せたくなるほど
庇護欲と 情欲双方がかきたてられ

即座に言い訳を くちにしてしまうあたり
我ながら 甘い。





「なら、これからも、、だめ?
あの、ね。 所属名 書くときっていつも
ちょっと照れるんだけど。。

おれ 豊川さんちから来てますって
うれしかったりする」


そして、その言い訳を捉えられ
上目遣いに強請られれば



「そう、なのか」

あっけなく 気持ちは揺らぐ。





「そう。 それに お仕事でついてくれる
マネージャーさんよりも
恋人の悦司さんのほうが、わがまま言えるし」


わがままなど たいして言わないくせに
そんなふうに甘えてくれる恋人に

片腕まわしたら
シャンパンをひと口含み
細い顎に 手を添える。




されることを察して
キスの角度に傾く 顔に、口を寄せ

「…っ、、ん」


シャンパンを飲みくだした後も
キスに混じる唾液すら ねだるよう縋る
カズの手を、 捕まえて 抱き上げた




…そして、リビングを 出ようとして
もう一度戻り 俺は黒い箱を手にした。
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