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人間の交尾をしよう
第1章 それは記憶の中の話
 手のひらを誘導され、掴むよう促される。
 
「わたしもリズとおんなじで、もう子供生めるからだになってんで」

 大きな手のひらに掴まれたまま、指導されるように、掴んで、やり方を無言のまま復習させられる。

「わたしも、メスになってんで」

 ジャージの下に隠れたかたちを思い出しながら、必然の体勢として見上げるように、頭上で私の唇を狙っている無精髭に述べる。

「知ってるよ」

 唇が重なり、そのまま床の上に押し倒され、何度も繰り返された行為の序章が始まる。

「このまえ、お母さんに赤飯炊いてもらったんやって?」

 メスでなかった頃から繰り返された行為の、序章が。

「見せてや。今、どうなってるか」

 Tに会って行くやろ?今部屋におるし、呼ぼか?
 え?いいの?なんで?
 は?
 怒られたくないって?
 あははは、ちょっとちょっと、嫌やわァ。
 いくらなんでも同い年のイトコ捕まえてまで説教せぇへんって。
 そこまで熱血ちがうわよー。
 フフフ・・・じゃあ、元気でね。
 ほんまにわざわざありがとうね。
 姉さんにもよろしく言うといて。
 Rくん、くれぐれもこの子らをよろしくね。
 大切に可愛がったってね。
 バイバイ、ほら、リズも、ペスとあの子らに、バイバーイって。

「嫌や。だって・・・」

 大きな手が、無理矢理私の足を左右に開いて、その中心に触れる。
 がさがさ音を立てながら、下着の上から中心に触れる。

「まだ」

 ええやんと呟きながら、触れる。

「あかんって」

 やめて。
 言った瞬間。
 指がゴムを引っかけて、足の付け根から中を覗く。
 ははっ、笑い声。

「リズもたまに、こんなんなってたよな」

 あれって、そうか。
 犬にも、あるんやんな。
 
「お願い、見んとって」

 玄関ドアの締まる音。
 あの女の深い溜息と、カチャカチャ鳴るリズの足音が1階の奥へ消えていく。
 これくらいならできるやん、と無精髭が囁く、真っ赤になった私の耳元の奥で。
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