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人間の交尾をしよう
第1章 それは記憶の中の話
「リズはどんな気持ちやったんやろなぁ?」

 指に引っ掛かっていたものがずるりと引き下ろされ、そして、さっきまで私が掴んでいたものが同様の流れで、私の前に現れる。

「どんなふうにペスを受け入れたんやろうな?」

 下半身を曝け出しながら無精髭を撫でて、終わったら髭剃って帰るわな、なんて呟きながら乱暴に押し当てられると、息が漏れる。
 抵抗する気持ちも起こらないくらいの。

「どんなふうに、ペスの子供を」

 それが、もっと先に進むと。私はもう。

「・・・いま発情期なん?」

 大きな背中に腕を回すだけ。
 リズより知能指数は高いはずなのに。

「ん?まぁ、そうやな。おまえが生まれた時からずっと発情期やったな。俺は」

 そしてこの男は、私よりもっと、知能指数が高いはずなのに。
 ははっ。
 また、笑い声。

「せやから、まぁ」

 重たい身体が私の上に乗る。
 床の上にページを伏した状態で放置されている漫画の表紙が視界に入ったから、私は目をきつく閉じた。

「ペスとリズやないけど」

 さっき一緒に見たあのページを思い出さないように。
 ペスとリズの、本能の趣いた行為を想像しないように。

「おまえくらいの子が言うてたセリフやないけど」

 そして。










「本来持つべき本能のまま・・・そう」










 ペスとリズの結末を、自分に置き換えないように。











「人間の交尾をしよう。な?」

 









 最後まで繋がった瞬間。
 おまえもしたいんやろ?と。
 お兄ちゃんが、私の耳の中で笑った。











【おしまい】
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