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初花
第4章 猫柳
夕刻、姿絵を手に
離れに脚を向けた。
「此の絵師は 其方の男であったか」
くちびるがわななくのを
そっと 接吻で塞ぐ。
「闇医者は、其方のことを
私の 見立て通りだと申した。
身を売るどころか
誰にも拓かれた事すらない筈だと」
「実際 殿が初めての御方でした。
その姿絵は…空似でございましょう」
「牡丹の打掛で 私の元へ来たのは
誰であったか、其方は忘れたか」
「ですが …わたしは あの日初めて
あの衣を 纏いました。
そして 此処から 独りで
表へ出たことなど 一度も」
ここへきて 私は己を恥じた。
何を訊けば 満足か、と胸に問えば
【絵師を いまだ 恋うているのか…】
惨めにも それを知りたいのだと
明らかではある。
だが 手に入れた少年を前に
そう 言葉にするほど
落ちぶれてはいない。
「そうだな。 此処へ来てからの
其方はすべて 私の物であった。
私が 龍のことを飽いたり
ましてや疎んだりすることなど
望んでも 叶いはしないと
覚えておくが良い」
出来うる限りやさしい手つきで
畏れに震えるうなじを撫でて、告げる。
やはり私は 鬼なのだろう。
離れに脚を向けた。
「此の絵師は 其方の男であったか」
くちびるがわななくのを
そっと 接吻で塞ぐ。
「闇医者は、其方のことを
私の 見立て通りだと申した。
身を売るどころか
誰にも拓かれた事すらない筈だと」
「実際 殿が初めての御方でした。
その姿絵は…空似でございましょう」
「牡丹の打掛で 私の元へ来たのは
誰であったか、其方は忘れたか」
「ですが …わたしは あの日初めて
あの衣を 纏いました。
そして 此処から 独りで
表へ出たことなど 一度も」
ここへきて 私は己を恥じた。
何を訊けば 満足か、と胸に問えば
【絵師を いまだ 恋うているのか…】
惨めにも それを知りたいのだと
明らかではある。
だが 手に入れた少年を前に
そう 言葉にするほど
落ちぶれてはいない。
「そうだな。 此処へ来てからの
其方はすべて 私の物であった。
私が 龍のことを飽いたり
ましてや疎んだりすることなど
望んでも 叶いはしないと
覚えておくが良い」
出来うる限りやさしい手つきで
畏れに震えるうなじを撫でて、告げる。
やはり私は 鬼なのだろう。