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負い目
第1章
始まったカウントと蝉の声。
いつの間にか橙色に光っていた空。
冷たい風の中にあの晩の記憶が蘇る。
ヒビだらけの白い粉吹きの手でわたしの肩を掴むお母さんの顔と声が、蝉の声の中で蘇る。
「お願い、かあさんを助ける思って。リョンにだって同じことさせてるやろ?かあさん全部知ってたんよ。テッちゃんのために今まで見て見ぬふりしてたんよ、母さんがなんも言わんでもアンタに色々仕込んでくれたんやから、リョンには感謝してるんよ。せやからあとはアンタの意思だけよ。お願い、かあさんを助ける思って。ネエサンにはこれ以上、迷惑かけれへんのよ。ネエサンのおかげで今まで生きてこれたんやから」
カウントダウンがヨンで止まる。
「服、ジブンで全部脱ぐよ。それから、最後に言うたこと以外、全部して欲しい。アンタがどっかのガキにしてたようなこと、わたしもそれくらいのこと、ずっとされてたよ。でも最後に言うたことだけは、アンタには望んでないよ。だって、そうしたらお母さんはまた叔母ちゃんに負い目をつくってしまうよ。アンタは更生してお母さんを助けたってよ。もう誰にも呼ばれないように隠れて生きてよ。呼ばれないならまともに生きれるんやろ?アンタなら出来るよ。わたしは、違う形でお母さんを助けるから」
蝉が鳴いていた。
夕立のあとの涼しい風の中で。
濡れた新緑が光を反射しながら擦れ合い、ガサガサ音を立てる橙色の中で。
羽化したときから始まっていたカウントダウンの音の中で。
自然の摂理に、抗うように。
「わたしは叔母ちゃんに、お母さんと同じ負い目をつくるから。そうしたら全部チャラになるよ。お母さん楽になるよ。な?そうしようよ、テッちゃん。アンタは確かに、なんもおかしくないから。だってさっき、わたしが、テッちゃんを呼んだから。背中に、こっち見てって、わたしを見て、それで・・・って。最後にリョンちゃんがそうしてくれるように、お母さんのために、テッちゃんを、呼んだから」
【おしまい】
いつの間にか橙色に光っていた空。
冷たい風の中にあの晩の記憶が蘇る。
ヒビだらけの白い粉吹きの手でわたしの肩を掴むお母さんの顔と声が、蝉の声の中で蘇る。
「お願い、かあさんを助ける思って。リョンにだって同じことさせてるやろ?かあさん全部知ってたんよ。テッちゃんのために今まで見て見ぬふりしてたんよ、母さんがなんも言わんでもアンタに色々仕込んでくれたんやから、リョンには感謝してるんよ。せやからあとはアンタの意思だけよ。お願い、かあさんを助ける思って。ネエサンにはこれ以上、迷惑かけれへんのよ。ネエサンのおかげで今まで生きてこれたんやから」
カウントダウンがヨンで止まる。
「服、ジブンで全部脱ぐよ。それから、最後に言うたこと以外、全部して欲しい。アンタがどっかのガキにしてたようなこと、わたしもそれくらいのこと、ずっとされてたよ。でも最後に言うたことだけは、アンタには望んでないよ。だって、そうしたらお母さんはまた叔母ちゃんに負い目をつくってしまうよ。アンタは更生してお母さんを助けたってよ。もう誰にも呼ばれないように隠れて生きてよ。呼ばれないならまともに生きれるんやろ?アンタなら出来るよ。わたしは、違う形でお母さんを助けるから」
蝉が鳴いていた。
夕立のあとの涼しい風の中で。
濡れた新緑が光を反射しながら擦れ合い、ガサガサ音を立てる橙色の中で。
羽化したときから始まっていたカウントダウンの音の中で。
自然の摂理に、抗うように。
「わたしは叔母ちゃんに、お母さんと同じ負い目をつくるから。そうしたら全部チャラになるよ。お母さん楽になるよ。な?そうしようよ、テッちゃん。アンタは確かに、なんもおかしくないから。だってさっき、わたしが、テッちゃんを呼んだから。背中に、こっち見てって、わたしを見て、それで・・・って。最後にリョンちゃんがそうしてくれるように、お母さんのために、テッちゃんを、呼んだから」
【おしまい】