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作品集
第11章 平成28年3月度

「なんとかしなくちゃ」という気持ちになりました。手紙に記してあった
彼女の電話番号に電話をかけ「何としても生きてほしい。何かあったら、いつでもここに来ればいいからね」と。電話の向こうで、
彼女は泣いているようでした。その後、私は部署の異動でその店を離れました。彼女も高校生になって行動範囲が変わったようで、店に来ることはなくなったと聞きました。そして、時は流れて……。つい先日、
その彼女と偶然再会したのです。
街中でベビーカーを押す女性とすれ違った際に、その若いママが私に声をかけてきました。
「もしかして、ラジオシティー(カラオケ店)の平野さん?」
「はい、平野ですけど、どちらさまでしょう?」
「中学生の頃、お店で傘を貸してもらった○○です。あの頃はお世話になりました。私も大人になり、今は子どもがいるんです」
明るい笑顔で話す女性の横顔に、沈んだ面持ちで夕暮れの店先に立っていた少女の顔が重なりました。
「あ、いやいや。全然変わっちゃったから、わからなかったよ。何年ぶりだろう?」「あの時、平野さんが貸してくれた傘、今も大切に持っています。どしゃぶりだった私の心に、傘を差し出してくれて本当にありがとうございました」
会釈して去っていく彼女に手を振りながら、私も自然と口元がほころんでいました。あの日、一本の傘が
つないでくれた私と
彼女の縁。私にとっても、かけがえのない宝物になっています。
彼女の電話番号に電話をかけ「何としても生きてほしい。何かあったら、いつでもここに来ればいいからね」と。電話の向こうで、
彼女は泣いているようでした。その後、私は部署の異動でその店を離れました。彼女も高校生になって行動範囲が変わったようで、店に来ることはなくなったと聞きました。そして、時は流れて……。つい先日、
その彼女と偶然再会したのです。
街中でベビーカーを押す女性とすれ違った際に、その若いママが私に声をかけてきました。
「もしかして、ラジオシティー(カラオケ店)の平野さん?」
「はい、平野ですけど、どちらさまでしょう?」
「中学生の頃、お店で傘を貸してもらった○○です。あの頃はお世話になりました。私も大人になり、今は子どもがいるんです」
明るい笑顔で話す女性の横顔に、沈んだ面持ちで夕暮れの店先に立っていた少女の顔が重なりました。
「あ、いやいや。全然変わっちゃったから、わからなかったよ。何年ぶりだろう?」「あの時、平野さんが貸してくれた傘、今も大切に持っています。どしゃぶりだった私の心に、傘を差し出してくれて本当にありがとうございました」
会釈して去っていく彼女に手を振りながら、私も自然と口元がほころんでいました。あの日、一本の傘が
つないでくれた私と
彼女の縁。私にとっても、かけがえのない宝物になっています。

