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作品集
第12章 平成28年4月度
1冊しかない参考書がボロボロになるまで勉強し、私もまた、他の生徒に気を使いながら、こっそり彼を呼んで夜遅くまで個別指導にあたりました。
すると約2か月で700人中ベストテンに入るまでになったのです。
まさに信じがたい伸びでした。S君はそれからも猛勉強を続け、最高水準の問題をこなせるようになりました。K学院の入試も終わり、合格発表の日を迎えました。私は居ても立ってもいられず発表時刻より早くK学院に行き、合格者名が貼り出されるのを待ちました。真っ先にS君の名前を見つけた時の喜び。
それはとても言葉で言い尽くせるものではありません。「S君に早く祝福の言葉を掛けてあげたい」
そう思った私は彼が来るのを待ちました。
しかし1時間、2時間たち、夕方になっても姿を見せません。母親と一緒にやって来たのは夜7時を過ぎてからでした。母親の仕事が終わるのをずっと待っていたようでした。気がつくとS君と母親は掲示板の前で泣いていました。「よかったな。これでおまえはK学院の生徒じゃないか」
我がことのように喜んで声を掛けた私に彼は明るく言いました。「先生、僕はK学院には行きません。
公立のT高校で頑張ります」私は一瞬「えっ」と思いました。T高校も高レベルとはいえ、K学院を辞退することなど過去にないことだったからです。
しかし、その疑問はすぐに氷解しました。
S君は最初から経済的にK学院に行けないと分かっていました。それでも猛勉強をして、見事合格してみせたのです。なんという健気な志だろう。私はそれ以上何も言わず、S君の成長を祈っていくことにしました。この日以来、S君と会うことはありませんでしたが、3年後、嬉しい出来事がありました。
東大・京大の合格者名が週刊誌に掲載され、その中にS君の名があったのです。「S君、やったなぁ」
私は思わず心の中で叫んでいました。

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