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偽善者
第1章 偽善者
 君は心の優しいお嬢ちゃんだから、ラッキーみたいに惨たらしく捨てられて、誰も助けてくれなくて、どうしようもできなくて、そして近いうちに間違いなく自分は死ぬんだって理解して絶望に浸ってるヤツを、見捨てることなんて、できないだろ?と。
 言って、おじさんは、玄関から私を笑顔で見送った。


「死にたく・・・悠里、泣いてないで、なんか言ってよ・・・泣くなよ・・・俺のほうが泣きたいんだぞ・・・俺には明日がなくて、あとヨジ・・・ああ、あとサンジカンゴジュウ・・・それだけしか残ってないんだ。悠里、頼むよ、なんでもいいから、なんか、俺に、言ってくれよ。黙ってないでなんか言ってくれ、頼むよ。最後の最後に悠里が泣いてた顔を焼き付けて死ぬのは嫌だ。お願いだから、なにか、なにか俺に・・・・」









 ねぇ、おじさん。
 いつからおじさんも、わたしのこと。








「・・・・・・しゅうちゃん」









 いつからわたしのこと。










「しゅうちゃん・・・・しゅうちゃん、泣かないで。わたし痛くなんかないよ。大丈夫。ちょっと怖かったけど、もう大丈夫。ねぇ、わたしもう泣かないから。大丈夫だから。こっち来て、ほら。ぎゅーして。さっきみたいにぎゅーして。ごめん。もう大丈夫だから。わたしがなんとかしてあげるから。しゅうちゃんが死なないように、なんとか出来るから。おじさんにお願いしてあげるから。だから、泣かないで。大丈夫だから、守ってあげるから。ラッキーみたいに、あの、わたしが3年のとき拾ってきたけど飼えなかった子犬みたいにしゅうちゃんを捨てたりしないから、今度は絶対捨てたりしないから。あの時と違うから。もう捨てたりしないから。わたしがしゅうちゃんを絶対守るから。ラッキーみたいに死なせたりしないから。だから、しゅうちゃん、泣かないで。わたしこれから頑張るから。だからわたしを、お父さんと、お母さんと、おばあちゃんを、忘れることができるように、ヒカルにしたように、わたしにも」












 偽善者だって、知ってたの?

















【おしまい】
 
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