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傾国の寵愛~初恋は熱く淫らにひそやかに~
第5章 真心の証(あかし)~逢瀬は美しく儚く~
鶏も身の危機を察しているのだろう、必死に逃げている。この主人と鶏の追いかけっこをいつしか道行く者が立ち止まり、笑いながら眺めている。粗末な木綿の衣服を着た民たちが目立つ中、たまに絹の上物を纏った見るからに両班だと判る者が通る。良家の子女らしい娘が母親とともにハンを興味深げに見つめている。
適齢期の娘を持つ親ほど、怖いものはない。ここでうっかり母娘の記憶に残ってはまずいと、ハンは慌てて帽子を目深に被り直した。
適齢期の娘を持つ親ほど、怖いものはない。ここでうっかり母娘の記憶に残ってはまずいと、ハンは慌てて帽子を目深に被り直した。