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白い背中と君の藍
第1章 インディゴ ◇始まりの空
一ミリも振り向くことなく去って行ったドアをぼんやりと見やる。

行っちゃった……。
でも、お弁当を温めてたから家は近いのかも。

何の疑問も持たずに、自分の頭の中を男性のことでいっぱいにしていく。

ほんの僅かに生まれた接点から、大きなヒマワリでも咲きそうなくらいワクワクしていると――――

「恵、今の誰だよ?」

「!!」

耳元に普段聴かないような低い声で、智充先輩が問い掛けてきた。

すっかり先輩の存在を失念して、ニヤけてしまった顔を引き締めながら恐る恐る振り返る。

目が合った先輩の顔は、明らかに不機嫌そうだ。

「智充先輩!  ご迷惑をお掛けしました!」

数々の失態と先輩のフォローを思い出し、深々と頭を下げる。

「あぁ〜。別にさ、失敗は誰でもあるからいいんだけど……」

いつもハッキリ言う先輩が、歯切れ悪く言葉を濁す。

私の接客態度が酷すぎたから、男性のことも気に掛けているのかもしれない。

「以後、 気を付けます」

「いや……じゃなくって、知り合いだったのかよ?」

「へ?」

「だから〜!   さっきの客!」

やけに男性のことを気にする先輩を不思議に思いながら、深く考えずにありのままを答えた。

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