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白い背中と君の藍
第2章 タンジェリン◇もっと知りたい
頬が凄く熱い。

きっと赤くなっているだろうけど、沈む夕日がかなり傾いて、空は濃いオレンジに変わっていたから、私の顔も蜜柑みたいになっているかもしれない。

だって男性の顔も、綺麗なオレンジだったから――――。

同じ夕日に照らされて、同色に染まる互いを見詰め合っていると

「君……絵描くの?」

男性が私に興味を示して来た。

観察でもするかのようにジッと凝視される視線が、やけに心地良い。

さっきまで誰も入れなかった彼の世界に、今私だけが存在しているんだ。

「絵は描けないです。だけど観るのは好きで……特に絵の具が好きなんです!」

「絵の具が?」

予想外な答えだと思っただろう。

無表情に近かった男性も、少し眉を動かした。

たったそれだけで私の中に、また新たな色が宿り出す。

「はい。実家が昔画材を扱っていたんです。今は雑貨屋に変わりましたけど」

そう、だから「絵の具が好き」なのもあながち嘘ではない。

たまたまであろうと、画材に馴染みがあったことを生まれて初めて感謝する。

咄嗟に吐いた言葉に裏付けをしていきながら、自分を『知って貰う』ことに快感に近い感覚が芽生えていた。

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