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白い背中と君の藍
第10章 エメラルドグリーン◇希望の光
「感情が高ぶったときの一時の行動で終わると思ったんですけど、孝秀が止めに入ってきて主人と揉めてしまい……その勢いで包丁が主人に……」
「刺さってしまったんですか……」
お母さんはゆっくり左右に首を振った。
「刺さってはないんです。でも腕を……かなり深く切ってしまって。出血も酷くて……」
「……」
真っ赤に血塗られた光景が目の前に広がって、若かった孝秀はショックと罪の意識に襲われて家を飛び出してしまったのだろう。
夢も希望も……帰る場所も失って――――
公園で無気力で座っている時に、死ぬことも考えていたのかもしれない。
もし眞貴子が声を掛けなければ……
私は孝秀と出会えなかったのだろうか。
そう思うと、凄く複雑な気持ちになってしまう自分が情けない。
「お父さんは……」
「傷も治って、今は元のように穏やか働いてます。怪我した理由も酔っ払いながら包丁を持って転んだって……孝秀を庇ってました」
「じゃぁ……」
「はい。だからもう孝秀は何も気にしなくて良いのに、借金を肩代わりしてくれた人の所で働いてるから探さないで欲しいって……小切手と一緒に手紙が添えられていたんです……」
お母さんは最後に小さく
「ごめんね……孝秀」
と声を震わせて涙を流した。
「刺さってしまったんですか……」
お母さんはゆっくり左右に首を振った。
「刺さってはないんです。でも腕を……かなり深く切ってしまって。出血も酷くて……」
「……」
真っ赤に血塗られた光景が目の前に広がって、若かった孝秀はショックと罪の意識に襲われて家を飛び出してしまったのだろう。
夢も希望も……帰る場所も失って――――
公園で無気力で座っている時に、死ぬことも考えていたのかもしれない。
もし眞貴子が声を掛けなければ……
私は孝秀と出会えなかったのだろうか。
そう思うと、凄く複雑な気持ちになってしまう自分が情けない。
「お父さんは……」
「傷も治って、今は元のように穏やか働いてます。怪我した理由も酔っ払いながら包丁を持って転んだって……孝秀を庇ってました」
「じゃぁ……」
「はい。だからもう孝秀は何も気にしなくて良いのに、借金を肩代わりしてくれた人の所で働いてるから探さないで欲しいって……小切手と一緒に手紙が添えられていたんです……」
お母さんは最後に小さく
「ごめんね……孝秀」
と声を震わせて涙を流した。