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白い背中と君の藍
第2章 タンジェリン◇もっと知りたい
『色々と恵まれるように』――――。

単純に付けたとお母さんに言われた名前が、凄く愛おしく思える。

「俺は――――あ……」

「あ?」

男性は名前を言い掛けたが、途中で途切れた。

『あ』が付く名前かな?

思い付く名前を浮かべようとした時、彼は自転車のハンドルから片手を離して進行方向に指を差す――――

「ほら……藍色だ」

「え……」

黄昏時が終わりを告げ始めた空は、橙から藍色に染まり出していた。

「綺麗……」

「あぁ……」

グラデーションになって空一面を深く色付ける『藍色』。

濃いながらも澄んだこの色に、無性に惹かれる。

まるで今、一緒にこの空を見ている人みたいに――――。

空を見上げる男性の横顔をチラッと見る。

また少し虚ろな目をしていたけど、一点を見詰める表情はこの空みたいに澄んでいるように思えた。

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