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白い背中と君の藍
第2章 タンジェリン◇もっと知りたい
藍色が広がっていくにつれ、どこか不安を宿していた面持ちが男性の顔から消えて行った気がする。

その様子にホッと安堵した。

まだ男性のことは何も解っていないけど、多分私はこの人に――――

笑って欲しかったんだ。

無言のまましばらく立ち止まっていると、男性はおもむろに呟く。

「孝秀……」

「ん?」

「鳥羽……孝秀」

「トバ……タカヒデ?」

これは、もしかして――――

彼の『名前』。

「うん……」

一言頷いて、男性は再び自転車を押し始める。

「あっ、どんな漢字で書くんですか?」

「普通。鳥に羽。親孝行の孝に……秀吉の秀」

「ヒデヨシ……豊臣秀吉?」

「うん」

やっぱり彼の思考は解りにくい。

「例えが面白いですね」

「そう?  普通だよ」

いや……
多分、普通じゃないです。

そう心の中で突っ込んじゃったけど、心なしか彼の声が楽しそうに聞こえたから、今は『普通』ってことにしておこうと思った。

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