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白い背中と君の藍
第3章 スカーレット◇近付けたら
「もう帰るの……?」

鳥羽さんは今までで一番、寂しそうな顔を見せた。

「あ……でも、絵の具も見せて貰ったし」

まだ一緒に居たい気持ちと帰った方が良いような感に、自分でもどうしていいのか分からなくなっている。

「絵の具なら、まだいっぱいあるよ」

縋ってくる犬みたいにジッと見上げてきて、私を引き留めようとする言葉に体中が熱くなった。

私はまだここに居ていいんだ――――。

そう自惚れた途端、下腹部の奥がキュッと疼いた。

「あっ!」

その妙な感覚に変な声が出てしまい、咄嗟にお腹に手を当てる。

「メグ?」

不思議そうに首を傾げながらも私から視線を外さない彼の瞳に、絡め取られるかのように再び床に座り込んだ。

どうしよう――――
私この人に囚われたい――――――――!!

青い景色に囲まれているせいか、彼の赤い唇が凄く浮き立って見えてくる。

このスカーレットは、彼自身の『命の色』。

触れたい!

近付きたい!!

いきなり湧いてきた自分の欲望に眩暈がして、眉根をキツく寄せて目を瞑ると――――

唇に温かい物が触れた感触がした。

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