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水蜜桃の刻
第10章 高揚
先生と食事をすることになったのは、それから一週間ほど経った休みの日のお昼のこと。
外回りをしている先生と、教えられたお店の近くで待ち合わせた。
少し早く着いた私は、先生が来るのを落ち着かない気持ちで待つ。
あのあとすぐに始めたLINEでのやりとり。
メッセージがきたらすぐわかるように、手に持ったままのスマホ。
きょろきょろとつい辺りを見回してしまい、そんな自分に苦笑する。
そんなに先生に会いたいの? と自分に問いかけて
……うん、会いたい。
先生に会いたい。
心の中で答えながら、あらためて先生のことを考える。
会うのは、あの再会の日以来。
突然のことに冷静になれなかった自分。
今日は……どうだろう。
あの日よりは普通に話せるだろうか。
……もしかしたら、今日の方が無理かも。
先生に惹かれていく自分を自覚してしまっている、今の方が。
深呼吸をするように息を吐き、また、手の中のスマホを確認した。
メッセージは何も入ってきていない。
先生……ちゃんと来てくれるといいな。
自分は本郷くんとの約束をドタキャンしたくせに、と彼に申し訳ない気持ちになりながらも……そう、それは誤魔化せない自分の正直な想いだった。