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水蜜桃の刻
第11章 その視線

「……まさか、透子ちゃんがお酒飲む姿を見る日が来るとはね」
「ん?」
「いや、何だか月日を感じるなって」
「やだ先生、おじさんっぽいよその発言」
「いいんだよ実際そうなんだから」
ははっ、と笑う先生に、私も笑って返す。
ごくり、とビールのジョッキを傾ける先生の喉仏が動いた。
女にはないからか、その部分に感じる男っぽさというものにきゅんとする。
「……何見てんの」
「え? あ、何でもない、です」
「はは! 『です』だって」
何で突然丁寧になるの、そう笑う先生から目を逸らし、カシスオレンジのお酒をこくりと飲む。
ビールや日本酒が苦手な私。
飲むときはいつも、カクテルかサワーだった。
念願の、飲みに連れてきてもらえた私の心はもうかなり浮かれていた。
酔った先生ってどんななんだろう──想像しては、どきどきする。
あの頃は家庭教師としての先生しか知らなかった。
外での先生なんて、全然わからなかった。
……女のひとを抱くときの先生なら、少しだけ、知ってるけど──そう思った途端、生々しく蘇りそうになるその光景。
慌てて、頭を振って追い出した。

