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水蜜桃の刻
第11章 その視線


気怠いような、その甘ったるい余韻。
はあ……と深く息を吐き、振り切るようにベッドから上体を起こす。


私と先生の関係は何の変化もないまま、日にちだけがただ、過ぎていた。

あれから数回、先生とはランチを一緒にした。
けれどなかなか互いのタイミングが合わず、飲みの約束はまだ果たされていなかった。

相変わらず先生のことばかり考えている私は、それにより時々沸き上がってくるその衝動に抗えず、流されるように……こんなふうに自慰に耽ってしまっていた。
もう忘れてしまっていたかのようなその衝動を、先生との再会で思い出してしまってからは。


連休1日目の午後。
カーテンを開ければ日差しが部屋の中に注がれる。

昼間からその行為に耽ってしまった自分が何だか急に恥ずかしくなり、シャワーを浴びて少し汗ばんだ身体と、頭をすっきりさせようと、立ち上がった。


やがて部屋に戻った私はスマホを手にしてベッドに腰掛ける。


「あ」


入っていたLINEのメッセージは先生から────。


「え、うそ」


思わず呟く。

それは、飲みへの誘いだった。
夜に入っていた予定がなくなったらしく、私がまだ何の予定も入れてなかったら、急だけどどう? という内容の。


「行く!」


一気にテンションが上がった私はすぐに返事を打った。 
そして、クローゼットの扉を開け、何を着ていこうか考える。

先生と夜に会うのは初めて。
やっぱりお昼に会うときとは違う、さらに浮き立つようなその気分。
ベッドの上に広げた服を交互に身体にあて、姿見の前でコーディネートを考える。

そうしながらも、時々スマホをチェックした。


『楽しみにしてるよ』


そして入ってきたそのメッセージに胸を高鳴らせながら、準備を進めた。



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