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水蜜桃の刻
第3章 その唇
先生が来るときは、いつもお母さんが家にいる。
だから、私が先生とふたりきりになるなんて有り得ないことだった。
どんなに淫らな妄想をしていてもあくまでもそれだけで、実際にそれを望むつもりなんてなかったし、望んでも無理な話だとわかってもいた。
けれど──その日だけは違った。
私の通っている高校は地元。
PTA役員は、地元から通っている子の親が選ばれやすく、当然うちもお願いされている。
基本的に集まりにはお父さんが参加していて、その日も午前中にそれがあった。
けれど朝、お父さんにかかってきた、一本の電話。
急遽仕事に行かなければならなくなってしまい、集まりには代わりにお母さんが行くことになった。
お兄ちゃんも部活でいない中、先生が来る時間も、もう迫っている。
家族が誰もいないのに──そう躊躇ったお母さんの背中を
「一回ぐらい大丈夫だよ。
先生にはちゃんと言っておくし、休憩のときのお茶だってちゃんと準備できるから」
その言葉で押し、私が初めて手に入れた、先生とふたりだけの時間。
もちろん、だからどうこうとかそんなことまでは考えていなかった。
でも、開放感はやっぱりあって、なんとなくテンションもいつもより上がっていた。