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水蜜桃の刻
第3章 その唇
時間の少し前に、やって来た先生。
事情を話すと、躊躇いながらも家に上がる。
指導内容は次回まとめて話すことにするよ、と階段を上りながら言われ、思わず考えた。
──この家には、今。
私と先生のふたりだけ。
意識した途端、鼓動が少し早まるのがわかった。
二度とない。
こんな機会、もう絶対ない。
そう思いながらも、ただ、それだけで。
それでも、せめて……と。
「先生、今日は勉強お休みじゃだめ?
先生の楽しい話いっぱい聞きたい!
あとでひとりでちゃんと自学するから……いいでしょ?」
階段を上りきったとき、そうお願いした。
ふだんきちんと勉強をして、成績も上げてる私を先生は信頼してくれてると思う。
「……しょうがないな。
今日は特別だよ?」
白い歯がこぼれるあの私の大好きな笑顔で、頭を撫でられながらの返事。
やったあ! と返しながらも、今までにないくらい胸がどきどきし始めたのがわかった。
なにこれ。
なんでこんなに?
……なんか苦しいんだけど────。
病気? と思うぐらい、それはひどくて。
……私。
先生のこと好きなのかも。
その感情に、今──気づいてしまった。