この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
水蜜桃の刻
第14章 氾濫
朝、目が覚めると先生の姿は部屋にはもうなかった。
あのあと、引きずり込まれるような睡魔に飲み込まれた私は、シャワーも浴びずにそのまま意識を失うように眠りについてしまって、先生がいついなくなってしまったのかはまったくわからない。
ベッドサイドのテーブルの上のバッグ。
自分で置いた記憶はないから、先生がそうしてくれたのだろう。
中からスマホを取り出すと、先生からのLINEが入っていた。
ホテル代は既に払ってくれているらしく、そのことと、今度また連絡する──そんな内容だった。
待ってます、と返し、シャワーを浴びにバスルームに入って頭から熱いシャワーを浴びる。
そして、先生に抱かれた昨夜のことを思った。
10年振りの、そのセックスを。
「先生……」
熱く反応していた私の身体。
とろかされた私の頭。
あんなに、強引な形だったのに。
気持ちが通じてからそうなりたい──そう思っていたはずだった。
でも、そうじゃない状態でも、結局私の身体も心もあんなふうに乱れ、気持ちよがって、先生を求めて。
はあ……と溜め息をついた。
私の、先生に対する感情は……ただの欲情だったんだろうか。
その欲情を、好きという言葉で誤魔化していただけ?
好きと思いこんでいただけ?
「……っ、違う……」
頭の中のそんな考えを振り払うように頭を振った。
……好きだから、抱かれたかった。
そう思い、目を閉じる。
昨日の自分を思い返して。