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水蜜桃の刻
第14章 氾濫


うん、と。
きっとそう、と。

だから、私は嬉しかったんだ。
これで終わりじゃないってことが。
次もあるってことが。

ここから始める。
先生と、ちゃんと始めていこう──あらためて、そんなふうに思った。


……そう、だから。


目を開け、彼のことを考える。
昨日……私に真っ直ぐに想いを伝えてくれた、本郷くんのことを。


『付き合うの?』


昨日の、先生の言葉を。
そしてそれに何の躊躇いもなく首を振っていた自分を。


「返事……しなくちゃ」


彼の気持ちを受け入れることは私にはできない。
それは、これからだってそうだ。
私は先生のことしか考えられない。
それはもう、はっきりしていた。
そこに、本郷くんの存在が入り込む余地などない。
だったら、少しでも早くそう伝えた方がきっといい────。


シャワールームを出たあと、身支度を整えた私はスマホを手にし、本郷くんにLINEでメッセージを送った。


『昨日の返事、していいかな』


それはすぐに既読のマークがついた。


『会いたいです』


間を置かずに入ってきたメッセージ。


『会って聞きます』


続けて、そう、また。


「本郷くん……」


……直接でなければ聞かない、そんな彼の思いを感じた。


『どこに行けばいい?』


私は覚悟を決め、そう返事をする。


……数分後。
送られてきた、時間と場所。
わかったと返し、それから私は静かに部屋を後にした。



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