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水蜜桃の刻
第14章 氾濫
先生が私に求めているのは、身体の繋がり。
なら、私がその心まで欲したら?
そしたら、この関係はどうなるの?
結婚もしてなくて、彼女もいないという先生。
それを、なぜなのか尋ねたことがあった。
先生はもてるタイプのひとだと思っていたから、どうしても不思議で。
『面倒だから』
答えはそのひとことだけだった。
10年前にお兄ちゃんが見た、そのときの女のひとの話をもう一度持ち出せば
『ただの友達』
そう、返された。
昔、誤解した私の言葉を訂正しなかったのは、やはり面倒だったからだと。
たぶん……身体の関係のある友達、そういうことだったんだろう。
そしてあのとき私に本郷くんとの関係を聞いたのも、その上で私を抱いた理由もそれでなんとなくわかった。
彼氏がいる子に手を出すと面倒だから──きっとそういうことだったに違いない。
終わったあとに、彼と付き合うかどうか聞かれて。
それを否定したからこその『また誘う』という発言────。
先生は、彼女という存在を必要としていない。
身体が満たされればきっとそれでいいんだ。
……そして、今のそういう相手は私だという、ただそれだけのこと。