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水蜜桃の刻
第14章 氾濫


私は先生のことを知らない。
先生をしてたときの先生しか知らない。
この10年の先生なんて何も知らない。
なのにどうしてこんなに惹かれるの?
もう先生とのセックスを知ってるから……それだけじゃないの?


どうしても、どこかでそう思ってしまっていた。


けれど先生と再びこうなって、こんな……身体だけの関係をしばらく続けてきたことで、私は反対に確信した。

あの、ひと月半前。
抱かれた翌日に思ったことを。


私は先生が好き。
ちゃんと……好き。


だって身体が満たされたいだけなら、この関係でもきっと満足できているはず。
なのに私は……私が行為のあとに思うことは、ただ寂しさだけ。
身体は深く満たされているはずなのに、終わった後のこの苦しさと、切なさはきっと……きっと、先生が好きだから。

そう、自覚できたのに。
やっと迷いなく私は先生が好きって言えるはずなのに──どうして先生と私は今、こんな関係なんだろう。


……ううん。
こんな関係だから自覚できたんだ。
──皮肉なことに。


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