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水蜜桃の刻
第16章 覚悟


「……ひどい顔」


翌朝────。

結局一晩中眠れなくて、鏡に映った自分に思わず呟く。


先生とのホテルでの逢瀬。
事が終わるとすぐに帰る先生を見送り、ひとりそこで夜を明かし、翌朝チェックアウトする──いつもそんなかんじだった。
支払いを済ませていてくれるのは、今日も……最後も、変わらずで。


ホテルを出て、会社に直行する。
目の腫れがひどく、職場でいろいろ詮索されるだろうな……と溜め息をついた。

途中、駅のお手洗いに寄ったときに鏡で再度確認したけれど、腫れはあまりひいていなかった。
だから今日はコンタクトではなく眼鏡にしている。
こっちの方がまだきっと目立たないから。


そこからは黙ってただ、歩く。
考えるのはどうしても昨日のこと────。


泣いて……ひたすらに泣いた夜だった。
思い出せばまたこみ上げてくるものがあり、慌てて頭を振る。
これから仕事なのに……と、この精神状態に自分でもさすがに不安を感じた。


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