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水蜜桃の刻
第17章 その心
「少しずつ、って本当はそう思ってたけど」
え……?
「送ったLINEの返事──苛ついた」
さっきの言葉が気になりながらも、続けられた内容に意識が一気にそっちに持っていかれた。
「さっきの奴とまだ一緒にいる、って何それ。
あんなあからさまな態度されてたら自分に好意があるってことぐらいもうわかってるだろうに。
……俺が好きなくせに何やってんの、って」
離される、顎にあった手。
でも私は先生にさせられたその角度のままで、先生を見つめ続ける。
「だから、私をホテルに呼んだの?」
「……来るかどうかは透子ちゃん次第だった」
「そんなの……っ、行くに決まってる……!」
目を逸らさずに言った。
「だって先生が好きだから……!
会いたかったから……!」
思い出す。
あのときのぐちゃぐちゃな気持ち。
訳が分からないまま、でもホテルに向かう足が止められなくて。
「……っ、なのに先生……何だか冷たくて……」
戸惑って、やっぱり帰ろうと思ったとき、そのまま先生に────。
震えてしまう唇を噛んだ。
さっきから感じていた息苦しさがなんだかさらに酷くなったかのようで、たまらず俯いた私は深い呼吸をそのまま何度か繰り返す。