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水蜜桃の刻
第17章 その心
自分の部屋へと向かいながら、なんだか熱い頬を手のひらで押さえた。
ひんやりとした、気持ちよさ。
どうしよう────。
夢みたいな。
夢じゃないみたいな。
そんな、よくわからない場所に自分がいる感覚。
だって、まさか先生の気持ちが私にあったなんて。
その心が、私に向けられていたなんて。
もう何も考えられなかった。
嬉しいという、ただそれしか。
部屋に入り、ベッドに身体を投げ出すようにして横たわる。
「……キス、された……」
仰向けになり、天井を見つめながらそっと指先で触れた唇。
……ここを、なぞって。
つつ、と指を滑らせればぞくりと肌が粟立つ。
……ここに、はいった。
その指を咥えた。
……ねっとりと絡められ。
ぺろりと舌で舐め上げる。
「────……!」
はっと我に返ったかのように私は指を離し、口元を両手で押さえた。
「先生……」
夜まではまだ、長い。
私は、深く溜め息をつく。
早く。
……早く、そのときになって欲しかった。