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水蜜桃の刻
第17章 その心


靴を履いた先生が振り返って私を見た。


「じゃ、後で」

「……ん」


私の顔が不安そうに見えたのか


「ちゃんと連絡するから」


先生はそう口にしてくれた。


「嘘じゃない。本当に、連絡する」


繰り返し告げられ、頷いた私に微笑むように笑う。
胸がきゅうっと締めつけられるように苦しくなった。

先生は、そんな、もういっぱいいっぱいになっている私を置いて、それからゆっくりと家を出て行く。


姿が見えなくなった途端、切なくなった。


ぎゅ……と自分の両腕で、そっと自分を抱きしめながらリビングに戻れば、なんだかさっきの甘ったるさがまだ残っているかのような、濃密なとろりとした空気を感じた。


そしてそれは、私の体内も。


……身体が。
なかが、熱い────。

  
『夜まで待てる?』


……っ……!


唇を噛んだ。
思い出すだけで、また疼く。
先生の言葉だけで、もう。


「……早く会いたい……」


さっきまで一緒にいたのにすぐにまたそれを望んでしまう。


「だって……」


そう、だってやっと想いが通じたんだから。
先生が、私を受け入れてくれたんだから。
……そのはず、だから。


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