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水蜜桃の刻
第18章 陶酔
その後、入った連絡。
指定された時間に、指定された駅前で先生を待つ。
ホテル以外の場所で待ち合わせなんてどれくらいぶりだろう──そんなふうに考えながら辺りを見ていると、近付いてくる先生の姿を見つけた。
途端に、胸がざわめく。
先生も私に気づき、その視線が合う。
私に向かって歩いてくるその姿に、心臓をぎゅっと掴まれたような感覚に陥ってしまった。
苦しい。
先生が好きすぎて、こんなにも。
「……お待たせ」
そう言って私の目の前で足を止める先生。
「行こうか」
促され、その後ろを着いていく。
「……どこ行くの?」
声をかけると、ん? と先生は振り向いて私に視線をくれたものの、何も答えずにそのまままた前を向く。
着くまで内緒なのかな──そう思い、それ以上聞くのはやめた。
そのまま少し歩き、先生の背中を見ながら歩いているうちに沸き上がってきたその衝動。
手を伸ばし、先生のスーツの裾をくん、と引く。
なに? と立ち止まって振り向いた先生に
「……手、繋ぎたい」
そう、お願いした。
ああ……と先生はそれに今気づいたかのように、すっと私にその手を伸ばしてくる。
「ん」
促され、その手を握る。
すると先生からも握られた。
痛いぐらいに疼く胸。
もう既に身体を何度も重ねているのに、その行為にこんなにも幸せな気分になるなんて思わなかった。
少し足を早め、先生の隣に行く。
視線をちらりと流してきながら、口元に少しだけ笑みを浮かべたその表情。
思わず私も、同じように返す。
先生と手を繋いで外を歩く……そんな日が本当に来るなんて────。
たまらず、握る手に力を込める。
触れ合う手から伝わる先生の体温。
その温かさに、なぜか少し……泣きたくなった。