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水蜜桃の刻
第18章 陶酔
「どうぞ」
食事を済ませ、先生の車に乗り込んだ私が連れてこられたのは、アパートの一室。
そこは先生の住んでいるところだった。
プライベートな空間に私が入ることを許してくれたことが素直に嬉しい。
気分は自然に高揚する。
広めのLDKはモノトーンの家具でまとめられ、落ち着いた雰囲気だった。
覚えのある匂いがするその空間に、先生はここで生活してるんだと、そうあらためて思った。
「……きれいにしてるんだね、先生」
どきどきする胸をごまかすように、辺りを見回すようにしながら何でもないことのように口にする。
けれど先生はそれには答えず、奥の部屋へと入って行った。
そこの灯りがつく。
「透子ちゃん」
そして声が耳に届いた。
部屋に近付き、中を覗く。
……そこは、寝室だった。
いきなり目に入った大きめのベッドに、心臓が波打つ。
クローゼットの扉を開けたまま、先生はジャケットを脱いでいた。
そのままタイを緩めて外す。
シャツの胸元のボタンを2つ3つ外し、手首のボタンもそうした。
まくりあげる袖。
外す腕時計。
前髪をくしゃっとかきあげるようにしてから、深い溜め息をひとつ落とす。
「おいで」
入り口で立ち尽くしたまま、先生のその仕草に見とれていた私にかけられた言葉。
そして私を見るその視線に吸い込まれたように、中へと足を踏み入れる。
先生を見つめたまま、その身体に近付いた。
すっ、と伸ばされてきた手。
私の髪に触れ、撫でるその指先。
ぞくぞくとする感覚に襲われた私は、たまらず目を閉じて息を吐いた。