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水蜜桃の刻
第20章 蜜刻


先生が私の身体をさらに強く抱きしめて
、もっと、と呟く。


「忍」


私はそれに応えた。
何度も先生の名前を囁いた。
先生は黙ったまま、私のその声を聞いていた。


やがて、先生が顔を上げる。


「……透子に、先生って呼ばれるの好きだけど、名前呼ばれるのもいいね」


私を見てそう言いながら微笑む。
指先が、そっと私の頬の涙の痕を辿った。


「……じゃあ、忍先生って呼ぼっか?」


ふふ、とその指先に触れながら私がそう口にしたとき、先生が私の唇に自分のそれを落とす。


「……可愛いな、透子は」


すぐに離して、そう呟き、そしてまた押し当ててくる唇。


「ん……ぁ」


柔らかくて、しっとりとしてて。
そんな先生の唇が好き。
先生とのキスがどうしようもなく好き。


「……っと……」


再び離れる唇。
でも、もっと──求めれば、すぐにそれは与えられる。


「……透子」


先生が、キスの合間に私の名前を囁く。
何度も囁いてくれる。
頭も、心も、先生の声に心地よく揺らされる。


「好きだよ」

「……っ」


その言葉さえ、先生は何度も口にする。


「好き」


私の唇だけじゃなく、頬にも、目元にも……呟きながらその唇を落とす。

透子、と。
好きだよ、と。

……くらくらするほどに、先生に……その言葉に酔わされていく。


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