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水蜜桃の刻
第20章 蜜刻
「透子……透子……っ……!」
私の名前を何度も呼ぶ先生の声。
「……は……俺、透子が……っ……!」
その声にはもう余裕は全く感じられない。
色っぽくてたまらない掠れ声。
そんな先生に抱かれている現実に、頭の中がくらくらとしてくる。
朦朧としたような意識の中、先生が続けた呟き。
『もっと透子が欲しい────』
……微かに、耳に届いた。
私の心の奥から、制御できないほどのその感情が急に生まれてくる。
ああ……。
先生の想いは、蜜に似ていると。
泣きたくなるぐらいの想い。
それらに支配されながら、先生のすべては私にとっての甘い蜜だと、そう、感じた。
その言動のひとつひとつが、甘く、とろみを帯びた蜜のように、圧倒的な何かをもって私の心と身体に絡みつく。
抗うことなどできなくて、頭の芯から蕩けさせられてしまう。
先生を好きな想いに、先生からの想いがとろとろと絡んで。
ただでさえ熱を持つその想いは、その蜜のせいで冷めることのないままにまた、さらに熱を持つ。
この想いは一生、きっと冷めない。
好き。
先生が好き。
それだけしか、もうなくなる。
私の中が、それだけでいっぱいになる。