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水蜜桃の刻
第21章 epilogue


「……ね、先生?」


お皿の中の桃をフォークで刺しながら、桃と一緒に届けてくれた、お母さんの言葉を思い出す。


『この前、先生がひとりでうちに来て、透子のことは先のことも含めて真面目に考えてるって、そう言ってたよ』


……言葉数は多くなく、いつも自分の中でいろいろと考えて表にはあまりそれを出さない先生だけど。
今もやっぱりそういうところがある先生だけど。
ちゃんと大事にされてること。
好かれていることを……忘れないでいようと思ったことも。


「先生」


それでも、と繰り返した呼びかけ。
ん? と視線を私に寄越してくれた先生に、聞く。


「私のこと、好き?」


時々は言葉にしてほしくなる、わがままな自分。
それも、嘘偽りない私の気持ち。


「……言ってほしいの?」


ふ、と……先生のその口元が微かに笑みを作る。
その笑みにつられるように私も微笑んだ。


「うん」


先生の問いを肯定する呟きを口にし、また、お皿の中の桃をフォークで刺す。

すると先生が私のその手を制した。
私から、フォークを奪う。
突き刺さったままの桃を、指でつまんで外した。
そして、そのまま私の口元に近付けてくる。

その意図を察し、口を開いた。
先生がまた、ふっと笑い、私の口内にそれを押し込む。


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